小人と7人の姫君(仮)6
「 小人、いまむかし 3 」
「ボクの名前はイェルグリ。ハノーバー国第4王子デス。」
でっかく出た!
由姫は思わずコーヒーを吹き出す所だった。
「え…っと?お、王子様なんだ。え?どこの国?ヨーロッパ?」
「イエ、ボクの国はヨーロッパにはありまセン。
レミュール大陸という、人間界とは半次元ズレた場所に存在します。」
イェルグリがニコッと笑う。
「はぁ…
で、その王子様がどうして私のフィアンセなの?昔、お会いしましたっけ?」
もちろん、由姫の記憶には小人の小の字もない。
「ハイ。でも出会ったのは遠い昔デス。アナタの前のアナタ。」
懐かしむ様な顔で指を組むイェルグリを、由姫は胡散臭く見つめた。
「私の前の私って…
前世ってこと?」
小人がコクンと頷くと同時に、由姫は鼻を鳴らして立ち上がった。
「悪いけど、その手の話を信じられる程、純真でもないしマヌケでもないんだけど。
何か他に目的があるんじゃないの?
政府に口出し出来る小人がいるんなら、悪徳商法に荷担する小人がいてもおかしくないもんね。」
「し、信じてくだサイ!!」
つまみ上げようとする由姫の手を避けて、イェルグリが抗弁する。
「他意はありまセン。本当なんデス。
第一、騙すならアナタの様な小娘じゃなく、お金持ちのマダムを狙いマスよ!」
「うっ!そ、それはそうなんだけど。」
イチコロです、と得意げに胸を張る小人を前に、由姫は頭を抱えた。
確かに一介の女子高生を騙すよりも、その方が効率がいい。
だからって、突然現れたこのメガネ小人のことを信じることもちょっと…
「やっぱりアナタは、我が愛しのアガサ姫の生まれ変わりデス。」
イェルグリがうっとりとした表情で、由姫を見上げた。
「その悪人を蔑む様な目。そのうたぐり深さ。
自分が納得いくまで人を信じない、その頑なさ。
アガサもそうでした。
美しい外見に惑わされて、どれだけの者がボロボロにされたコトか!
容姿は違えど、アナタはボクの姫デス!」
感極まって両手を広げて飛び込んでくる小人に、由姫はハエタタキで応えた。
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