小人と7人の姫君(仮)7
「 小人、いまむかし 3 」
「もう、本当に勘弁してくだサイ」
小人が半泣きで訴えた。
微妙にメガネフレームが歪んでいるところから、バトルの凄まじさが推測出来るだろう。
まあ、一方的な戦いだったけど。
「…なんで無抵抗なのよ?」
肩で息をしながら、由姫は尋ねた。
「ハイ、見とれてました。」
再びハエタタキを振り上げる。
「やぁ、本当に!
仕種のなにもかもがアガサ本人デス。
前世のアナタは襲い来る敵を愛刀で凛々しく薙ぎ払ってマシたが、ハエタタキを振るう今のアナタも同じくらい麗しいデス。」
イェルグリは飛来する武器から器用に身を逸らしつつ、由姫の周りを跳ね回る。
ふと由姫は、この小人が気味悪くなった。
突然現れて、由姫の前世を連呼するコイツはいったい何がしたいのか?
前世とか言われたって、その記憶がない以上、由姫は由姫だし、小人が望むようなことに従えるわけがない。
そうなると…
確か、昔話に有無を言わさず妖精や小人に掠われてしまうものがあるけど。
それは困るかも。
よし!
「先手必勝ォォォォォ!!」
由姫は金切り声を上げて、小人をブチのめしにかかった。
こんな奇妙な生き物、1匹だけでもお腹一杯なのに、さらにうじゃうじゃいる場所になんて行ってやるもんか!
分け入っても分け入っても小人、なんて絶ッ対イヤ!
ハエタタキは低い音を立て小人に命中した。
「ッ!?」
いやそれは、小人の頭上スレスレで止まっていた。
さっき由姫の手を弾いた不可思議な力と同じ物の様だ。
「う〜ん…今のはお遊びにスルには厳しいデスね。」
メガネのせいで表情は窺い知れないが、声には明らかに不興の色がある。
自然、由姫の背筋が寒くなった。
こんなに小さいのに、巨大な肉食動物を目の前にしているような気がするのはどうしてなんだろう?
「あ…えと…」
由姫が口を開きかけた瞬間、庭の飼い犬が狂った様に吠えだした。
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