ネコノベル9

 
                  ある初夏の晴れた日

アタシはニャンコ。
 

名前はピノ
 

ご主人たまは浮気性らしい。
 

今日もミルクを持って、そそくさと近くの草むらへ走って行く。
 

隠してても分かってるにゃ。
 

最近、近所に捨てられた子猫どもに会いに行ってるってことは。
 

「ごめんね〜、ピノたん。でもさぁ、この子達は自分でミルクも飲めないんだよ?」
 

言い訳にゃんて、いらにゃぁい。
 

ご主人たまの愛は、アタシ1匹に向かってるものじゃにゃかったの?
 

すっごく悔しくなって、コッソリ跡を付けてみた。
 

そしたら子猫どもが、アタシのご主人たまのお膝に登って甘えてた。
 

ち、ちょっとくらい若いからって可愛い子ぶるんじゃにゃいにゃ。
 

アタシだって、お目々をクリクリさせて見上げたら、ご主人たまなんてメロメロなんだから!
 

ムカついたので、足元の板切れで爪とぎしてやったにゃ。
 

そしたら、主人たまが慌てて振り向いた。
 

どうやらアタシがいることに気付かなかったみたい。
 

うぅ、なんか悲しいにゃぁ。

 
アタシなんて、もうどうでもいいのかにゃぁ。
 

しょんぼりうな垂れて帰ろうとしたら、ご主人たまが急いでやって来たの。

 
「ごめんよ〜。あの子達の飼い主が見つかるまでガマンしてね〜。」
 

 
 
その日の晩ごはんは、ハマチのお刺身だった。
 



 
ネコノベル10へ。