小人と7人の姫君(仮)4

 
 「小人、いまむかし 1 」
 
 
「ドゾ、お座りくだサイ。」
 
リビングに入ると、メガネ小人はまるで自分の家のように、由姫に椅子を勧めた。
 
自分はさっさと2人掛けのソファに腰掛けている。
 
それから帽子を持ち上げると、中から小さなティーカップを取り出した。
 
べ、便利帽子!?
 
あんなとんがりコーン並みの帽子から、カップが!
 
由姫がとりあえず、どこからツッコむべきか思いあぐねていると、メガネ小人が再び促した。
 
「どうしたんですか?サ、座って。
 
 まず紅茶でも飲みまショー。」
 
メガネ小人がカップを高く持ち上げた。
 
「わ、私が淹れるの!?
 
 つか、コーヒーしか置いてないんだけど?」
 
「あ、コーヒーでも全然構いまセンよ。
 
 小人は出された物は拒みまセン。」
 
いや、こんなやり取りをしたいんじゃなくて!
 
あああああ、でも何て言っていいか分からない!!!
 
「あのぅ、そんなにお口をパクパクさせて、何かの儀式デスか?
 
 ん〜、人間がコーヒーを淹れる前に、そんなことをするなんて、勉強不足デシた。」
 
「ちっが〜うっ!!!」
 
ああ、やっと言えたぁ。
 
由姫はメガネ小人が首を捻るのを睨みつけながら、一息で疑問を吐き出した。
 
「んもぅ!コーヒーとかじゃなくて!
 
 何?
 
 なんで?
 
 どうして小人が家にいるの?
 
 何が目的?
 
 何の用?」
 
ふぅ〜。
 
由姫は大きく息をして、目を閉じた。
 
なんだか少しはスッキリしたみたい。
 
もうメガネ小人のペースには乗らないんだから。
 
急に現れて何が何だか分かんないけど、今度は私が主導権を握らなくちゃ。
 
で、こんな面倒臭い性格の小人さんには、一刻も早くお帰り願おっと。
 
1人で都合良く考えを巡らしている由姫を哀れむ様に眺めたメガネ小人は、話が分からない人間だなぁとでも言うように溜息をついた。
 
「だから、それを今から説明しマス。
 
 なのでコーヒーお願いしマス。」
 
あ、あくまでも淹れさせる気か…
 
ティーカップを由姫に差し出して、ニッコリ笑うメガネ小人を見て、彼女はガックリうな垂れた。
 
主導権、ムリかも…
 
 
 
「小人と7人の姫君(仮)5」へ。
 

 
 
 
押していただければ、幸いです。
    ↓

人気ブログランキングへ
 
 

 小人と7人の姫君(仮)3

 
「 小人、遭遇 3 」
 
 
メガネ小人が呆れた顔をした。
 
メガネをクイってしながら。
 
左手の中指でクイってしながら。
 
「普通、若い女性なら、『きゃ〜、カ〜ワ〜イ〜イ〜』とか何とか言いながら、
 
 大興奮でボクのことを触りまくって、妖精ちゃん王子だとか、天使ちゃん王子だとか言って
 
 チヤホヤするはずデス。
 
 渋谷ではそうデシた。
 
 イケメガネのボクなら当然の結果デスが、ウザイのでオサワリは禁止にしまシタ。
 
 でもアナタはメガネからチェックデスか?」
 
コイツ…自分がどこまで通用するか、大胆にもすでに試してやがる。
 
由姫は、小人の意外なあざとさに怯んだ。
 
頭の中が1年中お花畑って訳でも無いんだ。
 
「ちょっと!聞いてマスか?」
 
小人が少しイラついた感じでメガネをクイってした。
 
その様子にチラっとムカついた由姫だが、文句を言って何か反撃されたら困るので、一応謝っておく。
 
「あ、はぁ…すいません…?」
 
「まぁいいデス。
 
 立ち話もナンですし、リビングに移動しまショー。」
 
「はぁ…って!ちょ!
 
 ここ、私の家っ!!!」
 
 
 
小人と7人の姫君(仮)4へ。
 
 

 

 
押していただければ、幸いです。
    ↓

人気ブログランキングへ
 

小人と7人の姫君(仮)2

 
「 小人,遭遇 2 」
 
「き」
 
「コニチワ〜」
 
由姫に悲鳴を上げる隙も与えずに、ソイツは挨拶した。
 
外見にピッタリ合った、妙に可愛らしい声が小憎らしい。
 
そう、由姫の目の前に小人が出現したのだ。
 
唐突に。
 
「な?だっ…そこ!?」
 
「ハイ、ソファから高速移動しました。
 
 床の上をススっと滑って。
 
 小人には簡単デス。」
 
あたふたしている由姫に笑みを投げ掛け、小首を傾げる。
 
まるで、由姫の言いたかったことは、コレで合ってる?とでも言うように。
 
その愛らしい姿に、由姫は一瞬で癒されかけた。
 
コ、コイツは反則だわ!
 
めっちゃカワイイよ!
 
由姫は、改めてマジマジと小人を見つめる。
 
全身白のコーディネートで、大きさは親指くらい?
 
動くたびに、三角帽子の先に付いている、フワッフワの毛玉が動くのがまた小動物っぽくていい。
 
あああああ、触りたぁい!
 
ほわっとした表情で、その小人の頭をナデナデしようとした由姫だが、何か得体の知れない力で止められた。
 
「オサワリは禁止デス。」
 
「あ、そうですか、すいません。」
 
素直に頭を下げた由姫が、ふと我に返る。
 
「なんで小人のくせにメガネッ!!!?」
 
「ええ〜?
 
 ツッコムとこ、そこデスかぁ〜!?」
 
 
 
小人と7人の姫君(仮)3へ。
 
 
 

押していただければ、幸いです。
    ↓

人気ブログランキングへ
 
 

小人と7人の姫君(仮)1

  
「 小人,遭遇 1  」
 

 
小人が世界を支配したらしい。
 
と言っても、由姫には実感が無かった。
 
この国のトップが青い顔で「小人特別法」を発表して1週間。
 
特に変化も影響も見られない。
 
高校がお休みになったのだって、たったの1日。
 
マスコミが、この世の終わりみたいに騒いでいたのは3日。
 
もっとパニックになるかと、心の底では期待していたのに肩透かしをくらったみたい。
 
そりゃ、世界が崩壊すればいいとは思ってないけど、もうちょっとアクションがあってもいいんじゃないかなぁ。
 
たとえば、今後の試験が延期になるとか?
 
由姫はため息をつきながら、鞄から家の鍵を取り出した。
 
それにしても、今日の数学は手強かった。
 
ムリ。ほんっと、ムリ。
 
試験勉強に加えて、次の授業までの課題の多さを考えると、憂鬱になってくる。
 
いっそ、小人が数学禁止法とか出してくれればいいのに。
 
それがムリなら、小人の祝日にするとか?
 
1日とは言わず、むしろ1ヶ月くらい。
 
大体、支配するって宣言を出したわりには、小人達はおとなしい。
 
これから人間は、小人の支配化に入るって声明が出されたくらいで、由姫達に特別な制限は無い。
 
むしろ、二酸化炭素削減と緑化運動に力を入れる方針を打ち出したくらいだ。
 
なんて地球に優しい小人なのかしら。
 
そうよね!
 
そんな小人さまには歓迎会が必要だと思うの。
 
国をあげて1ヶ月くらいパレードでも何でもすればいいんだわ!
 
もちろん、その間は学校はお休みで。
 
と、半ば本気で妄想していた由姫だが、玄関を入ったところでピタリと足が止まった。
 
妙な雰囲気がする。
 
それが何かと言われると説明できないんだが…
 
由姫は、スっと視線を走らせてみた。
 
リビングに通じる廊下。
 
その先に少し開いたドア。
 
ちょっとだけ見えるソファ。
 
そして…見慣れない影。
 
なんか、いる!
 
 
小人と7人の姫君(仮)2へ。
 
 

 
 
押していただければ、幸いです。
    ↓

人気ブログランキングへ
 

ネコノベル20 

 
                 ある初冬の晴れた日



皆様ごきげんよう
 

わたくしはチロル。誇り高きノラ猫。
 

今日もお昼過ぎまで挨拶が無いにゃんて、わたくしの下僕は何を考えているのかしら。
 

再教育が必要にゃようね。
 

それはいいとして、早く食事の用意をにゃさい?
 

あら、もう用意しているの?
 

いい心掛けね。褒めてあげるわ。
 

あら?
 

お出かけにゃさるの?
 

もちろん、わたくしの為に何かいい物を買って来る気にゃんでしょ?
 

でしたら、不承不承だけど、お見送りをして差し上げるわ。
 

それより、ピノお姉さまはいらっしゃらにゃいのね。
 

飼い猫として、マナーがにゃってませんわねぇ。
 

たとえ自分より格下の下僕と言えども、飼い猫にゃらば、その辺は心得ておかにゃいと。
 

いいですわ。
 

ピノお姉さまの代わりに、わたくしが全身全霊でお見送りをして差し上げますわ。
 

まず、下僕の足にすがって、ちょっと悲しそうに鳴くのがポイントでしてよ?
 

そうすれば、健気なわたくしの姿に心打たれた下僕は、ピノお姉さまよりわたくしを大事に思うはず。
 

そうなれば見ていらして。
 

わたくしが、ピノお姉さまの居場所に取って代わる日も近くてよ?




 

押していただければ幸いです。
    ↓
人気ブログランキングへ
 

 ネコノベル19

 
                 ある初冬の晴れた日

アタシはニャンコ。
 

名前はピノ
 

お昼ゴハンを食べてから、またご主人たまのお布団に潜り込もうとしたら、お外に出されそうににゃった。
 

ぃにゃぁん。
 

まだお家に居るよぅ。
 

にゃ!
 

ご主人たま、お出かけにゃの?
 

じゃぁ、アタシはお留守番してる。
 

良いニャンコにしてるにゃ。
 

だから行くんにゃら早く行けばいいにゃ。
 

寂しくにゃんてにゃいもんね!
 

全然ッ!にゃいもんね!
 

ぃにゃぁん、触らにゃいで!
 

そうそう、早く行って早く帰って来ればいいにゃ。
 

にゃ!
 

またお外で黒猫が媚びを売ってるにゃ。
 

忌々しいニャンコだにゃ。
 

ご主人たまの出足を挫くのはやめて欲しいにゃ。
 

それだけ帰りが遅くにゃるのに、分かってにゃいにゃぁ。
 

お見送りの時は、ドライかつクールに対応するのがニャンコってもんでしょ!
 




 
ネコノベル20へ。 
 
押していただければ幸いです。
     ↓

人気ブログランキングへ
 

 ネコノベル18

 
 
                       ある晴れた初冬の夜中
 
 
アタシはニャンコ。
 

名前はピノ
 

日が暮れて、2階に灯りが点いたら、ご主人たまのリラックスタイム。
 

アタシも一緒にリラックス。
 

ご主人たまぁ、入れてくだたぁい。 
 

ピノか?また屋根から来たんか?」
 

ご主人たまが、落ちるから危ないよ?って心配してくれるけど、大丈夫。
 

だってニャンコだもん。
 

うわぁ、お布団!
 

揉み揉みするねぇ。楽しいねぇ、ご主人たま!
 

あ、そうそう、お夜食はまだですか?
 

そろそろ小腹が空いてきましたよ?
 

「あ?ちょっとだけだよ。肥えるよ?」
 

わぁい、お夜食お夜食!
 

美味しいねぇ。美味しいねぇ。
 

じゃぁ、おにゃかも一杯ににゃったし、遊びに行くね!
 

 
 
 
…もう飽きたにゃ。またお家に入れてもらうにゃ。
 

灯りが消えてるにゃ。でも気にしにゃい。
 

ご主人たまぁ、入れてくだたぁい。
 

「…ピノか?…はい…。」 
 

うはぁ、ご主人たま、お布団揉み揉み楽しいねぇ。
 

ご主人たまの脇腹も、たぷたぷしてて気持ちいいねぇ!
 

ところで、お夜食はまだですか?
 

また小腹が空いてきましたよ?
 

「…あぁ…うん。…眠いんだけど。」
 

わぁい、お夜食、美味しいねぇ!
 

じゃぁ、またお外に遊びに行くね!
 
 
 

 
もう飽きたにゃ。お2階に行くにゃ。
 

ご主人たまぁ、入れてくだたぁい!
 

「…はい。」
 

にゃ?
 

ご主人たまのテンションが低い様にゃ気がする。
 

でも気にしにゃいにゃ。
 

もうそろそろお空が明るいですよぉ。
 

ゴハンくだたぁい!
 

「…4時…44分か…4時44分…はは…」
 

そんなことはどうでもいいから朝ゴハンですよぉ!
 

わぁい、美味しいねぇ!美味しいねぇ!
 

じゃぁ、お散歩に行ってくるね。
 
 
 
 
…お散歩にも飽きたにゃ。
 

ご主人たまぁ、入れてくだたぁい!
 

「…もう、ホント勘弁して下さい。」
 

にゃ?
 

にゃんのことか分からにゃいけど、もう寝るにゃ。
 

早くご主人たまの腹枕を出すにゃ。
 

 



 
ネコノベル19へ。


押していただければ幸いです。
    ↓
人気ブログランキングへ